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擁壁の水抜き穴

先日、某SNS上で水抜き穴のない擁壁がUPされているのを見つけてしまいました。正直もやもやした気分でした。

そこで今回は「擁壁の水抜き穴」の重要性についてまとめてみたいと思います。

 まずは「擁壁」について説明します。
 「擁壁」とは、斜面の土が崩れないようにするための構造物です。傾斜地などの高低差のある土地の場合斜面の土に圧力がかかると崩れる危険性があります。それを防ぐのが擁壁の役割です。擁壁の種類はいくつかありますが建築の分野ではL形の擁壁が多いです。

 擁壁の設置や構造などに関する技術的基準は宅地造成等規制法施行令によって定められており、その中の第10条に「壁面の面積3平方メートル以内ごとに少なくとも1個の、内径が7.5センチメートル以上の水抜き穴」の設置が記載されています。
(自治体の条例などにより異なる場合や、国土交通大臣の認可を受けた特殊な構法などを除く)。
 この法律は宅地造成規制区域内の規定の高さの造成工事を行う場合の擁壁のみ守らなければならない法律のため、厳しい検査もあり、安全性は高いのです。一方、法律に定められた高さ未満の擁壁は法的義務はなく構造計算も検査も伴わないため、必ずしも安全性が高いとはいえません。上記の基準に沿った水抜き穴が必ずしも設置されているとはかぎらないのです。
(私は基準以下の高さの擁壁でも水抜き穴のあるほうが望ましいと思います。)

 では、水抜き穴が必要な擁壁にそれが設けられていない場合どのようなリスクが予想されるのでしょうか。
 一般的に擁壁が崩落してしまう原因の多くは「水」にあります。
 地中の水は擁壁の水抜き穴を通って外へ排出されますが、水抜き穴が設けられていない場合は水は擁壁内にたまります。
水のはけ口がない土壌は水分を多く含んでいき、地盤は次第に脆弱化していきます。
 また、擁壁内の水がたまればたまるほどその水圧により擁壁は押される形になります。
さらには土は水分を含むと膨張します。土が膨張することによって擁壁にかかる土圧は強くなります。
擁壁に使用される素材はRC造など強固なものですが擁壁内の水圧と土圧は相当なものになるため、最悪の場合擁壁の崩壊などにつながります。

 

もう一つ、水抜き穴から土が流出していないか注意が必要です。
一般的に水抜き穴の擁壁側(土が被る面)には土が流出しないようにフィルターのような透水マットを設置します。
水抜き穴から土砂が流出してしまうと、土の流れた場所に空洞を作り出し、結果として地盤沈下の発生リスクが高まるからです。

※ 名古屋市には標準の擁壁の仕様があります。(名古屋市以外の地域でも仕様を使うことは可能です。)
  その仕様には当然ですが水抜き穴(下図の青色部分)、透水マット(下図の緑色部分)の規定はあります。

 既存擁壁の安全性を確認する際、これ以外にも危険な擁壁になりうる項目はまだまだありますが、水抜き穴の有無は最も重要です。そして、それを建築士や不動産業者のプロでも理解していないまま穴をふさいでしまっている擁壁があるのは事実です。どんなに耐震性の高い建物でも地盤が崩れてしまうと建物は崩壊します。今回は、多くの人に「水抜き穴」の重要性について知ってもらいたいと思い、今回はこのテーマをとりあげてみました。


高低差のある敷地や擁壁についてお困りの方はぜひ当社にてご相談ください。

担当:今田