アイデアは土地と会話することで生まれる。
一見すると建築には向かないような土地にこそ、実は最大の可能性が眠っている──
それがエグセファームの「希少地工法®」の核心だ。
今回取り上げるのは、名古屋市内にある一つの住まい。
崖地ではないものの、斜めに細長く、変形した土地形状。
まさに「希少地(狭小地・変形地など)」に該当する敷地だ。
この住まいの面白さは、敷地の特性を徹底的に読み解き、その個性を活かし切った設計にある。

建物はコの字型に設計され、東道路に対して開口を広くとることで、朝日の差し込む気持ちの良い住空間を実現している。
一般的には南道路が好まれるが、東道路は「光」と「プライバシー」を両立しやすい利点がある。
道路からリビングを覗かれる心配が少ないため、カーテンを閉めっぱなしにせずに済む。
家の中央に玄関を配置し、廊下を最小限に抑えることで、限られた床面積を「最大限に居室化」しているのも特徴的だ。
間取りとしては3LDKながら、ロフトや小上がり畳スペースを含めることで、実際以上の広さと豊かな暮らしが感じられる。
実際、延床面積は約40坪に満たないが、12畳のリビングを持ち、収納や子供の遊び場、そしてプライバシーまでしっかりと設計に織り込まれている。

特に注目すべきは、リビングの天井高だ。
屋根の勾配をそのまま内部に活かし、開放感を演出。
写真で見るとわかるように、上部の小窓から柔らかい光が入り、視線の抜けが空間をさらに広く感じさせてくれる。
アイデアは、まさに「土地と会話する中で生まれたもの」だ。
変形地ゆえの屋根制限を逆手に取り、デザインとして昇華させている。
設計者自身が住まい手であり、実際に7年間住んだ経験から「これ以上の間取りはない」と語るのも説得力がある。
廊下が少ないため、動線が短く、家事効率が非常に高い。
キッチンと洗濯機、物干しスペースが一直線に並ぶ理想的な家事導線は、住む人の毎日を支える強い味方だ。

さらに、「ガラスブロック」や格子のスクリーンで光と視線をコントロールし、外からのプライバシーと内部の開放感を両立。
子供たちの秘密基地のようなロフトスペースも、「安全性」と「楽しさ」を両立した遊び心ある空間となっている。
この住まいは、いわゆる「普通の家」ではない。
しかし、「普通ではない土地」を最適に活かしたからこそ生まれた、唯一無二の形なのだ。
見た目はコンパクトでも、実際に中に入ると広く、明るく、そして機能的。そのギャップこそが、設計力の証明だろう。
全国にはまだまだ多くの「誰もが避けたくなる土地=希少地」が眠っている。
だが、その一つ一つと向き合い、土地の声に耳を傾け、常識を捨てて考えれば、そこには必ず「最適解」がある。
この住まいは、その実例であり、同時にエグセファームの設計思想を体現するモデルケースでもある。
アイデアは、空から降ってくるのではない。
土地と語らい、その形に敬意を持つところから生まれる。土地を最大限に活かすとは、そういうことだ。
代表:牧田久義