
最初にこの土地を見た時、正直言って「これはすごいな」と思った。
高低差3.5m、崖地で、しかも変形した五角形。
一般の住宅メーカーなら即座に「この土地は難しい」と判断し、造成して平らにしてから家を建てましょうと言うはずだ。
実際に他社の提案はすべてその通りだった。
でも僕は違った。この形、この傾斜、むしろ“使える”と思った。
この家を建てたお客様は、大学で音楽の歴史を教える教授。
音の響きを最も美しく保てる「天井高3.5mのオーディオルーム」を求めていた。
そんな希望を聞いたとき、まさにこの土地が“それに応えるために存在していたのではないか”と直感した。
普通の土地で高さ3.5mを確保するには建物の総高さが膨らみすぎてしまい、法的にもコスト的にも現実的ではない。
だけどこの土地には高低差があった。
ならば掘り下げて、地中に半分埋めるように作ればいい。
そうすれば周囲の建物とのバランスも取れるし、外観にも無理がない。
まさに、お客様の「非常識な要望」と、僕の「常識的なアイデア」が奇跡的に合致した瞬間だった。
玄関から中へ入ると、階段を5段だけ下がった場所にオーディオルームがある。

ここはまるで“秘密基地”のような空間だ。
窓は最小限、防音材をふんだんに使い、天井高3.5m。背の高い書棚にはしごを設け、圧倒的な没入感を生み出している。
この部屋の上は寝室になっていて、そこからバルコニーへと繋がる。
バルコニーはウッドデッキ仕上げで、一般的な段差をなくし、部屋の延長として使える設計に。
実はこれは、僕が積水ハウス時代に描いていた「理想のバルコニー像」を再現したものだ。
雨水処理や視線の抜けを考慮し、機能美を追求している。
土地の南東には、奥様の趣味であるお花の部屋が設けられている。
趣味と機能が自然に同居する、まさに“暮らしを楽しむ家”になった。

この案件は、僕たちエグセファームにとっても創業間もない頃の2棟目。
僕自身のアイデアが初めて実現した原点でもある。
大手ではできない、いや、「やらない」設計に挑戦できる場を自分で作ったからこそ実現できた家だった。
希少地(=崖地、狭小地、変形地)は、一般的には「家が建てにくい」とされる。
でも、住む人の希望とアイデアが合致すれば、その土地は唯一無二の価値を持つ。
今回の事例は、土地と希望と技術が交差した「奇跡の縁」で生まれたものだと思っている。
こんなふうに、全国のどんな土地でも、エグセファームなら“住まいにできる”可能性がある。
常識を手放せば、家づくりの可能性は無限大に広がる。
それが僕たちの信じる家づくりであり、エグセファームが全国に伝えたい価値だ。
代表:牧田久義