土地の声に耳を澄ませば、常識を超えたアイデアが湧いてくるーーー
僕たちはこれまで、「希少地」と呼ばれる崖地や狭小地、変形地など、扱いが難しいとされる土地にこそ価値が眠っていると信じ、住まいづくりを続けてきました。
振り返れば一つひとつが挑戦の連続でしたが、その中で確信したのは、“土地の声に耳を傾けること”こそが、すべてのはじまりだということです。

これからご紹介する住宅も、まさに「希少地」の真骨頂でした。
最大10メートルもの高低差を持つ崖地。
多くの人が「無理」「売れない」と言ってしまうような土地。
でも僕には、この土地が何かを語りかけてくるように感じました。
可能性がある。ここなら、面白い住まいができる。そんな直感が、いつものように僕の中に芽生えたんです。

実際、この家の地下には2台の車が入るインナーガレージを設け、その隣にはゴルフシミュレーター室を配置しました。
夜でも気兼ねなく楽しめるよう、地中に埋めることで防音効果を確保しています。
そこから階段を上がると、高天井の玄関ホール。
さらにもう一段階段を上がるとリビング。
高低差を自然に活かし、空間の流れがスムーズに繋がっていきます。
住まいの中心となるリビングには、僕自身もこだわりを込めました。
天井の高さを揃えることで、構造的な強さと美しさを両立。
そしてその奥に続く和室。
ここは、少し階段を上がって配置しました。この“段差”が、空間に物語を与えてくれます。
和室に足を踏み入れると、まるで茶室のような凛とした空気が広がります。
黒の玉砂利、柔らかい障子の光。
和のエッセンスをモダンに融合させたこの空間は、僕自身も気に入っています。
住まいの設計において、僕は常に“想像力”を大切にしています。
「ここには何が生まれるか」「この高さから見える景色はどんなものか」。
現地に立ち、手で地面を触れ、そこから浮かび上がってくるイメージを形にする。
そして、それを実現するにはどうすれば良いか。そう考えていく中で、常識を捨てたアイデアが次々に生まれてきます。
たとえば今回も、高さ制限や構造上の制約と戦いながら、リビングの天井を計画通りの高さに持っていくために、他の空間とのバランスをとりました。
その結果、意図した通りの快適な空間が生まれ、強度的にも美しさ的にも納得のいく設計になりました。
こうして完成した住まいは、最初のスケッチ通り——いや、それ以上のものになったと感じています。
図面だけでは描ききれない空気感、景色、光の入り方、暮らしの気配。そこに住まう家族の人生が、確かにそこに息づいているのを感じます。
希少地には、土地の数だけ、家の形があります。
そしてそのひとつひとつが、家族の未来を描く舞台です。
だから、これからも僕は、常識にとらわれない住まいをつくり続けます。
土地と建物が響き合い、生き生きと呼吸をする。
そんな家を、またひとつ。
代表:牧田久義