●家づくりとは、土地とお客様の“声”を聴くことから始まる
「南向きの窓」「生活動線の最適化」「無駄のない間取り」―――
これらは一般的に“良い家”とされている要素。しかし、本当にそれだけが正解だろうか?
私たちエグセファームが手がけるのは、「希少地」と呼ばれる崖地・狭小地・変形地といった、一般的に敬遠されがちな土地に家を建てるという挑戦。
だからこそ、土地そのものの特性を深く観察し、「この土地ならでは」の設計を行うことを大切にしている。
その中で最近、ある疑問が浮かぶことが増えてきた。お客様とのヒアリングが、あまりにもテンプレート化されていないか?ということだ。
例えば、ある地方で見た風景。誰もが知っている“日本一の山”が、目の前に美しく広がる土地に家が建っているにもかかわらず、家のどこからもその山が見えない。土地のポテンシャルを活かしきれず、ただ“日当たり重視”の設計がされていた。
これが象徴するのは、「生活動線」や「日当たり」といった画一的なヒアリング項目にばかりフォーカスしてしまい、土地の声や、お客様の潜在的な価値観が置き去りになっているという現実だ。
僕らが目指すのは、決して“機能だけ”を満たす家ではない。たとえば、「このリビングから富士山が見えるようにしたい」「朝日が差し込む東向きの窓が欲しい」「夕日が沈む景色を毎日眺めたい」といった、人生に寄り添う視点から設計を始めることだ。

横浜や神戸、そして福岡など、全国の土地を歩いて感じるのは、同じ“崖地”であっても見える景色や感じ方が全く違うということ。
神戸では南に向かって夜景を一望できる傾斜地があり、福岡では北向きに海を望む高台が人気だ。横浜では、かつて外国人居留地だった場所が今も高級住宅街として機能し、歴史と眺望を両立した家が建ち並ぶ。
これらに共通して言えるのは、「土地にはそれぞれ個性がある」ということ。そして、お客様にも、年齢や価値観、ライフスタイルに応じたインサイト(内なる欲求)があるということだ。
にもかかわらず、ヒアリングが「リビングは何畳?」「収納はどれくらい必要?」というチェックボックスのような内容で終わってしまえば、本当に叶えたい暮らしには辿り着けない。
土地の声を聞くように、お客様の“人生の声”にも耳を傾けなければならない。
僕はよく、「今だけを見て家を建てていませんか?」と問いかける。30代で建てる家に、40代・50代になった時の自分の価値観や暮らしは想像されているだろうか?
「斬新なデザインの外観」も素晴らしい。けれど、10年後、20年後にもそれが“誇らしい”と感じられるだろうか。
「プライバシーを守りながら景色が楽しめる」「朝起きたときに光と風を感じる」「誰にも邪魔されずに季節を感じる」―――そういった要素こそ、“帰りたくなる家”に不可欠な価値だと考える。

家づくりにおいて、万人に受け入れられるデザインや機能を追いかけることは、決して悪いことではない。けれど、テンプレート的な思考では、本当に一人ひとりの人生に寄り添う家はつくれない。
「この土地に、この家族に、本当に必要なものは何か?」それを見極めるためには、土地と対話する力、そしてお客様一人ひとりと向き合う対話力が不可欠だ。
僕たちは「家を売る」のではなく、「未来を共に設計する」立場でいたい。
全国の希少地に向き合ってきた経験があるからこそ、どんな場所でも、どんな家族でも、「可能性がある」と信じて提案できる。
常識にとらわれない家づくりは、テンプレートに頼らないヒアリングから始まる。土地の声に耳を澄ませるように、お客様の“まだ言葉になっていない願い”にまで寄り添っていく。
それが、僕たちエグセファームの家づくりの本質だ。