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かけ造り

12月に入り突然の寒さが到来し、つい先日までの残暑はいつの間にか過ぎ去ってしまいました。
秋はいいつ来たのかわからないまま衣替えをした人も多くないと思います。
11月の終わりごろから各地で突然紅葉が始まり今週12月初旬が紅葉狩りのピークとニュースで知り、
同じように不思議な季節を感じているのも人間だけではないんだなあってしみじみ思います。

紅葉狩りで私のおすすめは京都の清水寺の紅葉のライトアップです。残念ながら11月いっぱいで終わってしまいましたが・・・。
建物と紅葉が光でとても幻想的で、昼間の紅葉とは一味違うものが楽しめます。是非おすすめです。
紅葉のライトアップは来年までのお楽しみになりますが紅葉は12月初旬くらいまで楽しめると思いますのでまだ間に合います。
(春の桜のライトアップも毎年あるので、こちらもおすすめです。)

さて、この清水寺ですが訪れたことがある人は多いかと思います。私も学生時代の修学旅行から何度か訪れました。
清水寺は京都の建築物の中でも魅力ある建物のひとつと私は思います。
清水寺の魅力は多くありますが、やはり本尊の千手観音菩薩が祀られている「本殿」とそこから張り出した「清水の舞台」かと思います。
そこからは四季折々の美しい景色を楽しむことができ、また舞台からの眺望は京都市内や周囲の山々を一望できるため、訪れる人のだれもが一度は心惹かれるものがあるのではないでしょうか。

さて、そんな清水の舞台ですが「懸造り(かけつくり)」と呼ばれる技法で建設されています。なかなか聞きなれない言葉ですね。
この技法は、地面から柱を立ち上げその上に建物を構築する方法で特に崖の上に建てる場合に適しています。

「清水の舞台」は、約13メートルの高さから崖にせり出しており130本以上の長大なケヤキの柱によって支えられています。
ちなみに13mとは4階建てのビル相当の高さです。ザトウクジラが全長約15mくらいなのでそれよりは小さいくらいです。

また釘を一切使用せずに木材を組み合わせて構築されています。釘の代わりに木の「くさび」を使用しておりくさびを使用することで適度なゆるみが生じ、
地震などの揺れが生じた場合には揺れを吸収する仕組みになっています。
今の建築では金物で強度を確保して耐える構造が主流の為、このような昔の木造建築の技術は大変感心させられます。

木材同士は「継ぎ手」と呼ばれる技術で接合されておりこれにより耐震性が高まっています。
床下には太い柱があり、その柱に貫(ぬき)と呼ばれる横材を通すことで水平剛性を高めています。
これらにより舞台全体の強度が増し地震などの外力に対しても耐えることができる設計となっています。

この「懸造り」の建築ですが実は清水寺のみならず日本各地にあるのはご存じですか?
例えば鳥取県にある三徳山三佛寺投入堂は有名です。

東海地方にもこの懸造りの建築がいくつかあるのでそのなかの一つ岐阜県関市にある「日龍峯寺」を紹介したいと思います。
岐阜県下最古の寺で、本堂前方が懸造りでつくられていて「美濃の清水」とも呼ばれているそうです。
境内には鎌倉時代時の尼将軍・北条政子によって建立されたという多宝塔が残されており、この建物は国の重要文化財にも指定されているそうです。

ちなみに余談なのですがこのお寺は両面宿儺(りょうめんすくな)が開創したと言われています。某呪術アニメの影響でで知っている人も多いと思います。
アニメファンならば一度日龍峯寺の両面宿儺像の姿を拝観してみるのはいかがでしょうか。

日龍峯寺(高澤観音)公式ホームページ|美濃清水|岐阜県関市
YouTube 【ぎふ140景】日龍峯寺(関市)岐阜新聞社

今回は「懸造り」についてとりあげてみました。
懸造りを現代建築に取り込むには現行の法律ではなかなか困難ですが、工夫次第で傾斜地でも建築することが可能です。
高台から折々の四季が楽しめるなどお金では買えない感動を得ることができる場所、それが傾斜地の土地の醍醐味かもしれません。

担当:今田